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カンテラ通りの定宿

カードワース創作宿「ハロウィン亭」「逢う魔が時亭」「午前3時の娯楽亭」「墓穴の標亭」「星数えの夜会」&いくつかの合同宿の面々の徒然記。

2025/01/01

祝日のネットワヤージュ【CWリプレイ】


ゆく年をかえりみて
くる年を祝おう。

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 CardWirth Scenario
『 祝日のネットワヤージュ 』
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シナリオ名:祝日のネットワヤージュ
製作者:マフ 様
形式:短編読み物
その他:NEXT専用


 この記事はカードワースのリプレイです。ネタバレにご注意ください。
 BL要素が含まれます。
 なお、こちらのシナリオは作者様の意思で現(R7.1.1)時点で公開停止状態にあります。
 公開停止中のシナリオのリプレイについて問題がありましたらBluesky等でお知らせください。

※ATTENTION※
 PCたちがシナリオにないセリフを話す・やまかしの解釈でモノローグを構成する等、独自の構成で書かれたリプレイです。
 そのため、このリプレイでは細かなニュアンスをシナリオ作者様の意図通りに読み取ることはできません。あくまで既プレイを前提としたエンタメ読み物としてお楽しみください。閲覧にあたっては、先にご自身でのプレイをおすすめいたします。
 シナリオに登場するNPC、スキル等の著作権はシナリオ作者様に帰属します。原文のまま掲載する文章もありますが、著作権を侵害する意図はありません。

◆今回のパーティ◆

※タンジェ、パーシィ、サナギ……やまかしPC
 黒曜、アノニム、緑玉……鳥子PC


【星数えの夜会・冒険者たちの自室】

 新年祭が迫る暮れの日。
 聖北教の聖誕祭が過ぎて間もなく、リューンの街は年末年始を迎えるのに賑わう。
 屋台の設置、荷物の配送、食事処の雑務……、ほとんどの冒険者は新年祭の依頼で出払っている。
 それでも依頼は無限ではない。掲示板の張り紙を手にするのは早い者勝ちであるのが冒険者の常。今も星数えの夜会の中にはぽつぽつと年末の依頼にあぶれた冒険者の姿が残っているばかりだ。


 緑玉 :この携帯食料、まだ食べられると思う?
タンジェ:ゲッ、いつのやつだよ、これ……。


 緑玉が放った携帯食料をキャッチしたタンジェは、少しの間観察した。


タンジェ:食うのは勝手だが、無事は保証しねえ。
パーシィ:勿体ないな。

タンジェ:……。


 タンジェは今度はパーシィへと携帯食料を投げ渡す。
 受け取ったパーシィは迷わず口に入れてしばし咀嚼した。


パーシィ:うん、ぜんぜんいける。ちょうど小腹もすいていたし。

 タンジェはドン引きした。
 その横を、大きな木箱を抱えたアノニムが通り抜けた。木箱に入っているのはロープやカンテラの油といった消耗品で、かなりの重量があるはずだが、馬鹿力のアノニムには大した労力でもないらしい。


アノニム:こいつはどこに置けばいいんだ?
 サナギ :それはここにまとめて置いてくれるかな。
パーシィ:ここの服、畳んでおくぞ。
 黒曜 :これとこれも頼む。

 自分たちの部屋を忙しなく、黒曜一行の面々が行き来している。



タンジェ:とりあえず半分くらいは片付いてきた……か?
 黒曜 :無事に片付いた部屋で年が越せそうだな……。
 サナギ :指揮系統の確立と、性能に基づく役割振り分けの勝利だよ。






 緑玉 :ねえ、換金用の皮袋、予備のほうの袋になにか入ってるんだけど……。
パーシィ:指輪……だな。見覚えがあるような……。
アノニム:処分し忘れてたんだな。
 サナギ :ちょうどいいね。このあとの新年祭の予算に足しておこうよ。
 黒曜 :タンジェ、あとで処分しておいてくれ。
タンジェ:ああ。せっかくだ、予定よりいい酒でも買うとするか。

 サナギ :あれ? タンジェは飲まないよね?


 タンジェと緑玉は未成年である。


タンジェ:黒曜たち飲むんじゃねえのか?

 黒曜 :それより飯が一品増えたほうがいい。

アノニム:(頷く)

パーシィ:俺も!

タンジェ:はっ、なるほどな。了解。



 遊撃の緑玉は、アノニムの部屋の整理をこなしていたらしい。


 緑玉 :こんなものがあったんたけど。アノニムのじゃないって言うんだけど、誰の?
 サナギ :うーん、誰のかな。
パーシィ:ああ、悪い。俺のだ。少し前に探してたんだが……そっちの部屋にあったんだな。





タンジェ:……お? なんだよ、危ねえな。
パーシィ:荷物袋から落ちたのだろうか?
 黒曜 :いや、先ほど数えたときは在庫の数は合っていた。
 緑玉 :どこかから出てきたわけ……?
タンジェ:もしかして、さっき引き出しで転がってたやつか?
アノニム:とりあえず、問題なく使えるみたいだな。
 サナギ :整理表の在庫数、書き換えておかないとね。


 
 その運び手の顔が隠れるほど、山のような本。
 たぶん運びきるのに二往復か三往復はいるかなあ、と言っていたサナギの想定に反して、アノニムはそれを一抱えで運んできた。



アノニム:持ってきたぞ。
 サナギ :うひゃー、すごいなあ。ありがとう。そこの本棚の前に置いてもらえるかな。


 黒曜の部屋にある立派な本棚は、サナギが欲しいとねだったものだが、とうの本人の部屋にはもうスペースがないのでここに置かれていた。
 夜会に読書を嗜む者は多くない。
 ただ黒曜はその本棚を彼なりに有効活用している。
 アンティークな造りの本棚は、かといってデザイン性だけに特化したものではなく、機能性も収納力も充分だ。



パーシィ:こうやって見ると、本も随分と増えたんだな。
 緑玉 :親父さんに『本棚を部屋に置きたい』って言ったときはどうなることかと思ったけど……。
 黒曜 :今でもたまに言われる。『重い家具増やしやがって、床が傷む』と。
 緑玉 :……宿暮らしの宿命かもね。
タンジェ:離れの家が売りに出たとき、本気で迷ったからな。買うかどうか、一日悩んだだろ。
 黒曜 :借りている部屋と違って、気を遣わなくていいのは魅力的だった。
パーシィ:でも、俺たちは家にいない時間が長いからな。
 緑玉 :娘さんが面倒見てくれるって話になった辺りで、親父に『今と大して変わらないじゃないか』ってツッコまれた。
 黒曜 :掃除と料理、いない間の管理、依頼の斡旋……冒険者稼業には宿が似合うということだな。
アノニム:縁がなかったな。
 サナギ :床の傷みは、稼いで返済しないとね。


【星数えの夜会・中庭】



 月下、中庭。痛いくらいの静寂と寒さの中、パーシィはじゃぶじゃぶと水を鳴らして桶を洗っている。
 桶の水は、凍っていないのが不思議なくらいの温度だ。


パーシィ:(さすがに、この時期の水は寒さが堪えるな……)
アノニム:生きてるか。
パーシィ:冬眠しそうだ。
アノニム:そりゃそうだろうな。




アノニム:親父からの差し入れだぜ。
パーシィ:ああ、悪いな。水桶洗い担当なんてついてないよなぁ……。
アノニム:変なところでツキがなかったな。
パーシィ:さっさと終わらせたいよ。
アノニム:手伝ってやる。このあとの新年会で飯を一品譲るならな。

パーシィ:俺にそれを要求するのは、アノニムくらいのものだよ。


 パーシィは笑った。



パーシィ:悪いな。それなら、さっさと終わらせるとしますか。


 冷えた水に再び触れる。先ほどまでより長く冷水に触れていられるのは、温かな紅茶と親友のおかげに違いない。



【星数えの夜会・厨房】



 星数えの夜会、一階のキッチンでは、新年会に向けて山のような料理が用意されている。
 親父さんや娘さんはすでに休暇ムードなので、買ってきたものがほとんどだが、大掃除の合間を縫いながら冒険者たちで作ったものもある。
 サナギは買ってきたピザの包装をあけて皿に移し替える作業などをしていた。



 緑玉 :サナギ、手伝う。
 サナギ :ありがと、緑玉。じゃあこのテーブルの向こう半分任せてもいい?
 緑玉 :分かった。
 サナギ :ごめんね、手、冷えちゃったよね?
 緑玉 :平気だよ、このくらい。
 サナギ :今日はいろいろ、手伝ってもらってばっかりだったね。

 緑玉 :どうしたの、しおらしくなって。珍しい。

 サナギ :確かに。寒いからかも。


 確かに火の入っていない厨房は寒く、手の先がかじかむ。
 サナギはふと思い出したようにポケットから小さな球状のものを取り出した。



 サナギ :そうだ! これ持っていってよ。



 緑玉 :……これは?
 サナギ :火の魔力を調節した、使い捨てのオーブなんだって。握ってるとだんだん、温かくなってくるんだよ。
 緑玉 :……いいの?
 サナギ :うん。使い捨てだし、大したものじゃないけど……今日のお礼代わり。
 緑玉 :あ、ありがとう……。


 緑玉はサナギの手からオーブを受け取った。温かくなるならすぐにでも使いたいが、使い捨てということは、使ったら捨てるはめになるのか……。



 緑玉 :(サナギからもらったものなんて、捨てられない……!)


【星数えの夜会・黒曜の自室】




タンジェ:お、すげぇ。



 暗闇に沈んでいた街中が、ぽつぽつとあたたかな光を灯し、賑わいを見せ始めている。



タンジェ:新年祭の夜店、もうあんなに出てるのか。
 黒曜 :人の出が少し引いたら、冷やかしにでも行くか。
タンジェ:そんな時間まで飲み食いするつもりか?
 黒曜 :どうせ起きているつもりだろう、今日は。


 黒曜の言葉にタンジェが答えるより先に、黒曜の手が急に頬に触れた。
 振り返ったタンジェの目は丸くなっている。



 黒曜 :あんまり窓を開けていると、冷えるぞ。
タンジェ:わりぃ、ついな。新年祭の準備が結構、見ごたえがあるんだよ。明かりが並んで、祭りがはじまるんだな、って。


 その言葉に、タンジェの年相応の高揚を感じたのだろう、黒曜は目を細める。



 黒曜 :……あとで行こう。


 タンジェは目を瞬かせたあと、頷いた。口元が緩んでいる。

 仲間の足音がした。各々、振り分けられた作業を終えて戻ってきたのだろう。
 別に懇ろな関係を隠しているわけではないのだが、タンジェが照れて嫌がるので、黒曜はタンジェから離れた。
 何事もないふうを装っているタンジェの耳が赤いのが寒さによるものではないことを、黒曜だけが知っている。




 黒曜 :そろそろ年が明ける時間か。
 緑玉 :今年も一年、なんとか生き残った……。
タンジェ:来年も再来年も生き残るに決まってるだろ。
パーシィ:来年は怪我の少ない年になるといいんだが。
アノニム:ご期待に添いたいところだがね。
 サナギ :あまり期待はできなさそうだけど……。


 一同は食事を並べ始める。
 がっつりめの食事、軽食、甘味、茶、葡萄酒、……。



 黒曜 :そこを空けてくれるか。
パーシィ:どんどん並べてしまおう。
アノニム:一応、酒も受け取ってきた。
タンジェ:これ広げちまうぞ。
 緑玉 :皿、こんな感じでよかった?
 サナギ :漬物は味が混ざらないように、お皿を分けてね。干物は並べちゃっても問題ないから。



 言いながら、ようやく一通りの料理を並べ終えた一同。
 サナギがグラスにお茶を注いで一同に行き渡るように回した。

 年が、明ける。



 サナギ :それでは、新しい年を祝しまして。
 緑玉 :今年も無事に、年が明けますように。
アノニム:気の早い話だな、おい。
パーシィ:過ぎた一年にも、感謝を。



 今しがた通り過ぎていった1年に僅かばかり思いを巡らせた。ほんの数瞬のこと。それから誰からともなく、グラスを掲げた。

 リューンの街中では、新年祭が始まる。
 そして星数えの夜会では、新年会が始まる。

 6人の声とグラスが重なった。



「乾杯!」



「祝日のネットワヤージュ」でした。
 まずは本当に素晴らしいシナリオを作ってくださった作者様に最大の感謝を! ありがとうございました。

 というわけで……
 昨年は大変お世話になりました。
 今年もよろしくお願いいたします!

 祝日のネットワヤージュ、以前からずっと本当にめちゃくちゃ好きなシナリオです。たぶん、私自身が年末年始の空気感が好きだからかもしれません。
 シンプルなシナリオながら、丁寧に描写されるPC関係や、年末の大掃除の活き活きとした描写が生活感を感じさせてくれて、気持ちがとてもあたたかくなります!
 本が増えたとか、報酬を処分し忘れていたとか、消耗品の在庫管理の手間とか……PCたちのこの1年の歩みや冒険なんかのかけらが散りばめられていて、それを一つ一つ拾っていくようなシナリオのつくりがワクワクさせてくれますよね。
 みんなが各々いろいろあっちこっちうろうろしていて、でも忙殺されているわけではなく、どこか浮ついた落ち着かない、ポジティブなせわしなさが伝わってきて! 日常とはちょっと違う、年末年始の独特の雰囲気……あれが私は好きでしてね……。伝わりますか……このリプレイで……!?
 描写しやすいように改変してしまった部分も多々ありますので、お手元にシナリオをお持ちの方で未プレイ……という方がおられましたらぜひご自身でのプレイをおすすめいたします! 既プレイの方はこの年始にぜひ再プレイもご一考ください!
 ちなみに、クロスオーバーシナリオは4つともプレイしましたが、今回のリプレイには組み込んでおりません。


 ここからは恒例の奇声を上げる感想です。
 まずこのシナリオ、PTメンバーの役職が、リーダー盗賊戦士癒し手(聖職者)遊撃参謀と、星数えの夜会PCの想定役職にドンピシャなんですよ!
 私は友人・鳥子と合同でいくつか宿を作っているのですが、キャラクターを3:3で作るおり、「じゃあ私は盗賊作るね」「じゃあ私は戦士」って感じで、必ずPCたちにこの6役職を割り振っています。でもすべてのシナリオがこれらの役職を想定しるってわけではないじゃないですか。マスコットや会計が入ってたり、逆に戦士・聖職者・遊撃(フリー枠)の指定がなかったり。それが! 過不足なく全部! 揃っている! その時点でもう充分すぎる充実度!!
 その上設定できる関係性は、想い、保護者&マスコット、という素晴らしいラインナップ! 保護者とマスコットは敢えて設定するほどの該当者はいませんが、恋人、親友、片想いだけで夜会1班の関係性は行き届くんですよ!(強いて言うなら犬猿の仲があったらより嬉しかったのですが、なくても大満足ッッ!)
 うひょ~! 最高かよ~!
 と設定しただけで満足していてはいけません。関係性の固有会話がマジでいい
 親友の気さくな軽口……! 貧乏くじを引いたパーシィをちょっぴりからかっているようででもしっかり案じているアノニム5億点!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 片想いのいじらしい様子……! 距離を伺いながら手伝いを申し出る緑玉に、明朗に応じながら何気なくプレゼントを渡すサナギ5億点!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
 補足なんですけど、ここのシーン厨房じゃないな……と思いますが、サナギの部屋のテーブルをわざわざ片付けることはないと思う(1日の大掃除で片付くレベルの混沌ではないため)ので、分かりやすく厨房に改変してます。
 そして二人きりの恋人の甘イチャ……!! 新年祭の屋台にちょっと浮ついた様子のタンジェに、それを愛おしく思う黒曜の表情が目に浮かぶんですよねぇ~5億点!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

100点満点中15億点です。


 ここからはリプレイにはまったく関係ないので読み飛ばしていただいて大丈夫です。いつものキャラとの噛み合わせとかの語りとも違いますので……!

 最初、この「祝日のネットワヤージュ」は、ノベライズしようと思っていたのです。
 しかし、何度書いてもどうしても納得いくものができず……断念し、こうして通常(?)のリプレイを書こう、という結論に至りました。

 私は一次創作で小説を書いています。「おやすみヴェルヴェルント」です。全編通して、(視点主が変わることはあれど)一人称視点で書いておりまして、別口で三人称視点を書くことも多いですが、その場合でも三人称一元視点です。全知視点(神の視点とか三人称多元視点とか、まあ呼び名は置いておいて)は書きません。というか、書けないのです!! めちゃくちゃ不得手でして……!!
 しかし、地の文の情景描写やPCたちの会話を神の(PLの)目線で楽しむカードワースにおいては、ノベライズに全知視点は必須、といっても過言ではない気がします。それでもあえて誰かの一人称視点で書くという方向性のノベライズも楽しそうですが、ことこの「祝日のネットワヤージュ」においては、誰か一人の様子をカメラで追うより、定点カメラでみんなの慌ただしい様子を見守るような、そんなノベライズのほうがいいんじゃないか、と思ったのです。でも前述のとおり、書くのめちゃくちゃ苦手なんですよね〜……!!!!!!!!!
 そういうわけで全知視点で書いたのですが、違和感、修正、違和感、修正……を何度繰り返しても結局満足いくものは書けず……諦めました! むずいぜ! CWシナリオノベライズ!
 ノベライズはいつか別のシナリオでリベンジの機会があったら嬉しいなと思います……!

 でももちろん、このリプレイは楽しく書いております! 敬意と情熱も持っています! 当然ですが全力で書きましたし、今後も全力でやらせていただきますのでよろしくお願いします~!( ●◜௰◝● )
 2018年に作者様のご意向(修正のため)公開が停止になっているようで、以降公開されていない?ようなのですが、もしこのリプレイの掲載に問題がありましたら、X等でお知らせいただければ幸いです。

 重ねて、シナリオ作者様とここまで読んでくださった方に多大な感謝を!
 ありがとうございました!


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